ダート・微振動・フォール。自作ワームで冬のボトムゲームを攻略する

3系統同時進行。
冬のボトムゲームに向けて自作ワームを開発する。
きっかけは、なんとなく湧いてきたやる気
前回のオス型作りから、気づけば半年が経っていた。
きっかけは特に何があったわけでもない。ただ、久しぶりに「やる気」が湧いてきたので、ワーム作りを再開することにした。
今回作ったのはお湯マルで作る3系統のオス型とメス型。
- ゴビー — ハゼの動きを意識したダート特化型
- BOTTOM BUG — 冬の低活性期でも口を使わせる微振動系(虫系)
- BOTTOM NEEDLE(仮) — サンドワームをイメージしたフォール特化型
季節はちょうどハゼの時期から、これから水温が下がっていく冬に向かうタイミング。せっかくなので、今シーズンだけでなく冬まで見据えたラインナップを組むことにした。
※前半で出てくるプラスチックな造形物はあくまでもオス型で実際のワームではありません。
①ゴビー — ダート特化、断面形状にこだわる
まず手を付けたのは、ハゼをイメージしたダート特化型のワーム「ゴビー(Gobie)」。
実は一昨年にもゴビー型を作っていたのだが、あれは全くダートしないタイプだった。今回は「ハゼが動き回る様子」を再現したくて、一から見直すことにした。
初期バージョンを作る際に命名は色々考えたんだけど、「ハゼドン」と付けたらSNSで既出だと言われたので英語やフランス語で呼ばれるハゼの総称の「ゴビー(Gobie)」としていきさつがあるワーム。

全体シルエットのあたりを取った試作段階。頭からテールにかけてのテーパーを確認中。
縦テールでダートを妨げない
ダートを重視するなら、テールは横向きより縦向きが良い。水平テールは横振動を生んで直進安定性を出す方向に働くので、ダート性とは相性が悪い。縦向きにすることで左右方向への水抵抗を減らし、ジャークの反応をダイレクトにボディへ伝えられる。
ただし薄すぎると千切れやすいので、根元は少し厚みを持たせてテール先端に向けてテーパーさせた。
ボディ断面は「腹ぽってり、背中にエッジ」
当初は背中側を広く、腹側を細くする「逆V字」の断面を考えていたが、実際に試作して比べてみると、逆の方がハゼらしさが出ることに気づいた。
最終的に採用したのは、お腹が丸く張り出して大きく、背中側に鋭いエッジ(稜線)が来るタイプ。魚の腹を下にして置いた時の自然な断面に近い形だ。
- 背中のエッジが水の切れを作り、ジャーク時にロールしにくく直進的な切り返しが出る
- お腹の丸みが浮力・水受けの面で安定感を出しつつ、ハゼらしいポッコリ感を演出する
不揃いなのは手作り感満載でなんかとでも温かみを感じますね。

背中にエッジ、お腹側に丸みを持たせたドロップ型。
胸ビレの切り込みが生んだ、思わぬくびれ
胸ビレを造形するために切り込みを入れたところ、それが結果的に「くびれ」となり、お腹のポッコリ感をより強調する副産物になった。狙っていなかったが、良い方向に転んだ形だ。
ただしくびれの谷が鋭角だと、型から抜いた実物が裂けやすい弱点になる。オス型の段階で谷にRを持たせ、耐久性を確保している。

真横から見たシルエット。頭部すぐ後ろのくびれと、胸ビレ後方に頂点を持つ背中のアーチ。
胸ビレは小さくシンメトリーに
当初は左右非対称にして不規則な動きを狙うことも考えたが、非対称形状はロール(回転)方向のトルクを生みやすく、量産時の個体差がそのままロール特性のバラつきに直結する。
不規則さはボディ側の造形(縦テールやくびれ)で十分出せるので、胸ビレはシンメトリーに統一。位置違い(ヘッド寄り/中央寄り)の2バリエーションを同数作り、比較テストできるようにした。
とにかくダート重視でボディー断面はどこを切ってもデルタ型になるように気を使いました。
これでなら小さなジャークでもピョンピョンと機敏に動き回るハゼの動きを再現できるはず!
キ胸ビレ位置違いの2バリエーションを量産。均一性と左右のブレを基準に選抜した。
②BOTTOM BUG — 動かさず、置いて誘う虫系
冬の低活性期には、大きく動くものより「そこにいるだけで自然」な存在感の方が効くことが多い。そこで作ったのが虫系ワーム「BOTTOM BUG(ボトムバグ)」。
コンセプトは「底面フラット・微振動・二股脚」
- 底面をフラットにして、着底時に自然な姿勢を保つ
- 太めの節ボディで、僅かな水流でも微振動を生む
- 後端の二股パーツで、軽い動きでも揺れを生む
これらを踏まえて、まずボディ(節構造の胴体とヘッド)だけを12個作り、サイズと節の数を統一してから、最後に脚を一括で付けていく段取りにした。先に脚を付けると、その後の微調整がしにくくなるためだ。
このボリューム感が何とも艶めかしいじゃないか!

まずボディだけを12個作り、サイズと節の数を統一。ここから脚を付けていく。
脚は前方に短め、後方に長い二股という構成。できるだけ揃えるよう意識したが、手作業なのでどうしても個体差は出る。むしろこの程度の手ムラは、量産品っぽくなりすぎない味になっていると思う。

短い前脚と長い二股の後脚が付いて完成。オレンジ・ピンク・グリーン・オリーブの色替え。
③BRISTLE — ただそこにいるだけで食い気を誘う
3系統目は、さらに低活性の状況を見据えたゴカイ系ワーム「BRISTLE」。
名前の由来は、ゴカイ(多毛類)の英名bristle wormから。体節から生える細かい毛(剛毛)を意味する言葉で、環状リブと薄いヒレの質感にちょうど重なる。
※本来の発音は「ブリスル」に近いのだが、この記事では「ブリスタイル」と呼ぶことにする。語感が気に入ったので、ここだけの特別ルールということで。
「動かさない。見せて食わせる、第三の選択肢。」というのが今回のコンセプトだ。
- 全長にわたってほぼ均一な円筒形
- 環状リブを密に配置し、ゴカイの体節を再現
- 頭部はリブと同じ太さで段差なく繋げる
- テールはわずかに二又にカットし、控えめな揺らぎを残す
さらに、リブの谷を繋ぐように薄い膜状のヒレを側面に這わせることで、静止時の微振動をより強化する構造も試みた。

リブの深さ・太さを意識して試作した9本。ここから本番の基準サイズを決めていく。
カラーは基本的に単色展開だが、一部でボディとヒレを別色にする「ツートン」も検討中。ヒレだけ赤にすることで、微振動のたびに赤がチラつく生々しさを狙っている。
自作モールド材で型取りする
3系統合わせて、ゴビー12個・BOTTOM BUG12個・BRISTLE数本という原型が揃ったところで、型取りに進んだ。
型のベースにしたのは、変成シリコン+片栗粉+小麦粉を半々で練った自作の型取り材。市販のシリコン粘土ではなく、身近な材料で代用している。
配合の硬さによって、細かいリブの転写精度が変わってくる。柔らかすぎると原型を押し込んだ時にリブの谷まで材料が回り込まず甘い転写になり、硬すぎると押し込み自体がしにくくなる。このバランスを見ながら、SIKIRI 6(6区画のケース)に原型を敷き詰めて硬化を待った。
半日ほどで離型。細かいリブや薄いヒレまで、思った以上にしっかり転写されていた。

SIKIRI 6の6区画に、ゴビー・BOTTOM BUG・BOTTOM NEEDLEの原型を配置。

離型後の型。縦テールのリブや脚のディテールまで綺麗に転写されている。
レジンコートと、酸素阻害の壁
型の耐久性・離型性・艶を上げるため、離型後の型にレジンをコートした。ただし塗りすぎるとリブの谷にレジンが溜まり、せっかくの深みが失われてしまう。筆に含ませる量を少なめにして、薄く重ね塗りすることで対処した。
ここで一つ壁にぶつかった。UVライトでしっかり硬化させたはずなのに、表面がベタつく。これは酸素阻害と呼ばれる現象で、UVレジンの表面が空気に触れていると硬化しにくくなる性質によるものだ。特に凹凸の多い形状だと、光が均一に当たらない部分でこの症状が出やすい。
幸い、型に塗る離型剤にアルコール成分が含まれていたため、離型剤を塗る工程でベタつきも同時に除去できた。

レジンコート完了後の型。表面に艶が出て、リブの深みもそのまま残っている。
いよいよマテリアル充填へ
型が完成し、あとは実際のシリコンワームを流し込むだけの段階まで辿り着いた。
半年ぶりの再開から、まさか3系統同時に、しかも型取りまで一気に進めるとは思っていなかった。冬の低活性期に向けて、ダート(誘う)・微振動(待つ)・フォール(見せる)という3つの引き出しが揃いつつある。
週末の実釣に向けて、このまま充填〜完成まで駆け抜けたい。
続きはまた次の記事で。






